歯周病は、ワンちゃん猫ちゃんの健康を脅かす重大な病気です。口臭から歯の脱落、内臓の病気まで、さまざまな問題を引き起こします。
そんな歯周病を予防・治療するために、最も効果的な処置がスケーリングです。今回は、スケーリングの重要性や具体的な手順について詳しくご紹介します。
1. スケーリングで歯石を取り除こう
スケーリングって何?
スケーリングとは、専用の器具(スケーラー)を使って、歯に付着した歯石を除去する処置です。「歯石取り」と言う方が耳馴染みがあるかもしれません。
歯石は、日常の歯磨きだけでは取り除くことが難しく、放置すると歯肉炎や歯周病の原因になります。スケーラーを使用することで、歯の表面にこびりついた硬い歯石を削り取り、口の中を清潔に保ちます。
歯石の及ぼす影響
歯石が蓄積すると、口臭、歯肉の炎症、さらには歯の脱落などが起こる可能性があります。また、口腔内の細菌が血流に乗って、全身に影響を及ぼすこともあります。これらのリスクを避けるためにも、スケーリングは定期的な歯科ケアの一環として重要です。
歯周病について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2. 実施前に知っておきたいこと
スケーリングのタイミング
スケーリングの実施時期は、ワンちゃん猫ちゃんの口腔状態を観察して判断します。例えば、口臭が強くなったり、歯肉が赤く腫れていたり、歯に黄色や茶色の硬い付着物が見られる場合は、歯石が蓄積しているサインです。また、食欲不振や、口を触られるのをいつも以上に嫌がるといった行動も、歯石や歯周病の兆候かもしれません。このような症状が見られたら、動物病院の受診をお勧めします。
どのくらいの頻度がベスト?
歯石の形成速度には個体差がありますが、適切な歯磨きを行っていても完全には防ぎきれません。そのため、一般的には年に1回程度の頻度で歯石取りを行うことが推奨されます。口腔内の状態に応じて、獣医師と相談しながら適切な頻度を決めましょう。
麻酔なしでできる?
一部の動物病院では無麻酔でのスケーリングを行うことがありますが、無麻酔では歯石の完全な除去は困難です。無麻酔では動物が動いてしまう可能性が高く、施術が非常に難しいだけでなく、動物自身にとっても大きなストレスになります。また、無麻酔では歯肉の深い部分の歯石を除去することが困難で、またすぐに歯石が蓄積してしまいます。こういった理由から、当院では全身麻酔下でスケーリングを実施しております。
抜歯の可能性も
歯の状態や歯周病の進行具合によっては、スケーリングと同時に抜歯が必要になる場合があります。また、スケーリング中に急遽抜歯が必要と判断されることもあります。
抜歯には、他の歯や歯肉の健康を守る効果があります。飼い主様としては、愛犬・愛猫の歯を抜いてしまって、食事に影響がないのかご不安かと思います。しかし実際には、ワンちゃん猫ちゃんは歯が数本抜けても、基本的な食事に支障はありません。 むしろ、炎症を起こしてグラグラの歯が残っている状態が最も痛みを感じ、食欲の低下を招きます。
3. 安全で確実な処置のための全プロセス
術前検査
スケーリングは全身麻酔下で行うため、安全のために術前検査を行います。術前検査では、血液検査や胸部X線(レントゲン)検査、必要に応じて腹部超音波(エコー)検査を行い、麻酔が可能かどうかを確認します。場合によっては、追加で麻酔後に口腔周囲のX線撮影を行います。
スケーリング
全身麻酔が効いた状態で、スケーラーを使って歯石を除去します。歯の表面に付着した大きな歯石はもちろん、歯と歯の間や、歯肉の下に隠れている歯石も丁寧に削り取ります。奥歯や歯の裏側など、見えにくい部分もしっかりと処置します。歯石が多い場合や奥歯に固くこびりついている場合は、時間をかけて慎重に行います。
ポリッシング
スケーリング後にはポリッシングを行います。ポリッシングとは、歯の表面を研磨して滑らかにする処置で、歯石の再付着を防ぐ効果があります。
専用の回転式ポリッシャーと研磨剤を使用して、歯の表面を丁寧に磨きます。この処置により、歯の表面がツルツルになり、細菌や食べ物の残留物が付着しにくくなります。
抜歯
スケーリングの際に、重度の歯周病や損傷がある歯は、抜歯が必要になることがあります。抜歯には専用の器具(エレベーター)を使用し、歯を緩めてから取り除きます。必要に応じて縫合を行い、出血を抑えます。抜歯後は抗生物質や鎮痛剤の投与が必要な場合もあります。獣医師の指示に従い、適切なケアと管理を行いましょう。
スケーリングとポリッシングの処置は、麻酔導入を含めて通常1〜2時間程度かかります。歯石の量や歯の状態によって所要時間は変わるため、事前の検査でしっかりと確認しておきましょう。
4. 当院でのスケーリングについて
保険適用になりますか?
スケーリングは、「歯周病の治療」という扱いであれば、ペット保険が適用される場合があります。ご加入の保険会社にご確認ください。
費用はどのくらい?
当院でのスケーリングの料金は以下の通りです。
犬・猫共通 ¥11,000~¥22,000
術前検査・全身麻酔・抜歯・術後のお薬の料金が別途必要です。詳しくはスタッフまでお尋ねください。
また、当院では、令和6年6月1日〜8月31日の期間、「デンタル応援キャンペーン」を実施しております。
◆歯科処置 30%オフ
※検査・麻酔・抜歯の代金は別途かかります。
◆デンタル製品 最大20%オフ
※一部製品は除きます。
◆歯科検診 無料
この機会に是非ご来院ください。
歯周病の予防・治療には、スケーリングが不可欠です。歯石を除去し、口腔内を清潔に保つことで、大切なご家族の健康を守りましょう。
愛犬・愛猫の歯や口のことでお悩みやご不安がございましたら、クロス動物医療センター勝どきまでお気軽にご相談ください。